検校の庵
タイトルが妖怪小説のようですが、違う。 東京在住のもの書きが読んだ本を記録に留める日記です。 もの書きが読んでばかりでいいのかと思うだろうが なに、開かんと欲すれば、まずは蓋をするべきなのです。
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DATE: 2006/07/10(月)   CATEGORY: マンガ
さんさん録
 「それでも」という言葉が好きだ。
 この言葉にはリスクを肯定する覚悟がある。
 どんなリスクも、この言葉一つで受け入れられる、度量の広い言葉だ。
 まあ、そこまで硬く考えずとも、男らしい言葉には違いない。
 きっと島本和彦先生もお好きだろう。

 今回の本はこちら。
さんさん録 (1) さんさん録 (1)
こうの 史代 (2006/03/11)
双葉社

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 主人公は、定年を迎えた〝じいさん〟。妻にも先立たれ、孫娘はブキミ。息子は生意気。いつぼけるかと心配されている……一見、まったく幸せのカケラも持っていない様に見える。
 しかし〝じいさん〟はある日、亡くなった妻の日記を見付ける。
 そこには家事のノウハウと、〝じいさん〟へのメッセージが綴られていた……。
 〝じいさん〟は結果、働き始めた嫁の代わりに主夫になるのだが、いつしか家事と、それを通じた家族との触れ合いが生き甲斐となっていく。
 妻に先立たれた事実も、孫娘のブキミさも、息子の生意気さも変わってない。
 それでも、〝じいさん〟は幸せな日々を手に入れたのだ。

 ……とまあ硬く書いてきたが、〝じいさん〟自体は至って楽しそうに家事をしている。
 短いページのわりに毎回毎回のオチもきっちり付けてくれる。
 なにより見事なのは、人物の心の変化をキッチリ描いてくれることである。
 例えば最初に買い物に行ったときは離れて歩いていた孫娘が、いつしか手を繋いで歩くようになり、更に時間が経つと開けにくい袋を「あけて」とねだるようになる、という具合である。
 簡単なことのようだが、1ページ十秒と言われるマンガにおいては、こうした演出は、説明がないと見過ごしがちなものであるし、またラクガキを雑誌に載せてしまう漫画家もいる現代に置いては貴重な才能とも言えるのである。
 作者のこうの史代は「夕凪の街桜の国」で一躍時の人となったが、こっちの作風が本来である。
 気が付きにくいが、表紙カバー折り返しにサメに追われる男性の絵が密かに描いてある。
 連載を読まないと分からないことだが、これは一巻中に名前だけ出てきた〝おじいちゃま〟である。
 こうした遊びも楽しい。
 同作者の「ぴっぴら帳」についても、いずれ紹介しよう。

さんさん録 2 (2) さんさん録 2 (2)
こうの 史代 (2006/06/28)
双葉社

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 二巻、出ますた。
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